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水がめに、きれいな小川の水を入れて、淡水魚を育てているとします。そこへ汚染した土を一握り入れてみます。すると魚は、何時間もしないうちに死んでしまうでしょう。どうして魚は死んだのでしょうか。 それは、汚染した土に含まれている毒性物質が作用したからでしょう。では、その有毒物質が、どのように作用したからなのでしょう。もしかすると、えら呼吸している魚のえらを、泥が塞いでしまったからかもしれません。そこで科学者たちは、魚の死んだ原因を見つけ出すために、汚染した土と魚の組織を、多くの時間と費用とエネルギ-を消費させて調査します。 しかし、魚の死んだ原因は、生物学的、生化学的には、一つとして分からないままなのです。魚が健康に育つようにするには、どうすればいいでしょうか。もちろん、汚染した土を入れなければいいだけのことです。きれいな小川の水に汚染した土を入れなければ、それが一番だと知っていながら、原因究明のために、とても簡単な問題を過度にミクロ的な観点から科学的に見ようとするわけです。 現代医学の薬物療法は、どこかこれと似てはいないでしょうか。こういったからといって、もちろん、科学的究明の努力を否定しようとしているのではありません。私たちの体をつくっている細胞は、すべて水と酸素、そして栄養素からできています。特に栄養素は、細胞の機能を維持するために使われています。そして、さまざまな栄養素のバランスが、細胞の生存環境を清浄に維持していく上での必須条件なのです。もし、細胞に問題が起こり、病気になった場合、この酸素と水、そして栄養素のバランスをチェックし、細胞の生存環境を清浄に維持する、世界で一番よい治療剤をつくりさえすれば、どんな病気でも治療が可能となるはずです。これこそが、マクロな観点をもつ総合治療法といえるものです。 私たちは精神病に対し、少し難しく構えすぎているようです。Eden療法からすれば、精神病はそれほどの難病ではありません。常識のレベルから、もう少し詳しく観察してみれば、精神病も皮膚病も、同じように理解することができます。簡単に理解できれば、治療もやさしくなるでしょうし、予防もできるというものです。 まず、脳について、簡単にご紹介します。次は脳の細胞と脳の細かく分化した機能と役割、最後に脳の動く原理についてご紹介をしますから、栄養療法の治療原理をご理解ください。 1.脳の細胞について 脳の重さは、約1.3kg、男性は平均して1.35kg、女性は平均1.25kg です。そして、その細胞の数は1000億くらいといわれています。 ※脳の解剖学的構造と機能 脳は、きわめて複雑な構造をしていますから、それを説明するための解剖学的用語も非常に多いのですが、基本構造としては、大きく次の4つに分けることができます。 1)脳幹(brain stem) 脊髄と直接につながっている部分ですが、基礎的生命を維持する中枢部分で、爬虫類の脳と似ているので、ときに「爬虫類の脳」とも呼ばれています。ここには、生命を維持する上で、一番基本となる心臓の血液循環と、肺の呼吸運動をつかさどっている延髄のあるところです。延髄は、中枢神経の一部で、心臓の搏動と肺の呼吸とをうけもち、それらの自律的機能を調節しています。また、脳からの命令を受けて、情報信号に換え、心臓や肺に伝達する働きをしています。パニック障害は、この延髄の神経回路網に問題があると考えられます。 2)脳下垂体や間脳など(limbicsystem) 脳幹の上側にある小さな複合体で、主に、脳下垂体や間脳の部分です。脳下垂体は、えんどう豆くらいの大きさの小器官で、発育・生殖に関係するホルモンを分泌しています。また、間脳の大部分は、視床下部よって占められていますが、この視床下部というのは、白い大きなかたまりで、ここに、知覚神経がまとまった形で集中しており、いわば、知覚センターのようになっています。つまり、脳下垂体や間脳の部分は、体内における化学的信号ということのできるホルモンの作用や、体が感じとる知覚神経の興奮などによって、哺乳類の最も本能的な部分である食欲、性欲、眠気などを引き起こします。 しかし、ホルモンの分泌や神経の興奮によって発生する本能の情報信号群、つまり本能的パルスの大部分は、人類特有のきわめて発達した大脳(cerebrum)によってコントロールされています。これは、人間の動物的欲望・本能的感情である食欲・性欲・睡眠などが、モラルや体面を守り、善悪の価値判断などをしながら、社会的人間として生活していく際に、きわめて重要な働きをする大脳の理性的制御を受けているということになります。ですから、もし、この大脳の理性的制御のまったくない人がいたとすれば、ところきらわず、食べたり寝たり、セックスしたりするから、社会生活に順応できない精神異常者と見なすわけです。 しかし、まったく大脳の理性的制御のない人も、逆に、本能を100%、大脳によってコントロールされている人も存在せず、私たちは、日々、この間を揺れながら生きているのです。ただ、本能的パルスを発する脳下垂体や間脳などの部分と、本能的パルスを制御しようとする信号を発する大脳との間の神経回路網に、何らかの故障が生じている状態を、精神病と呼ぶことがあります。精神分裂症も、この回路に異常の生じている症状のひとつです。また、元気よく生きていく上で不可欠な本能的パルスが弱かったり、大脳が本能的パルスを抑制しすぎたりする状態が、うつ病に関係しています。 3)大脳(cerebrum) 頭蓋骨内の大部分を占めている、精神作用をつかさどる主要な器官です。この大脳の表面を形成している灰白色の部分が大脳皮質ですが、大脳皮質は、神経細胞を主な成分としており、感覚・意識の中枢として働いています。つまり、体のさまざまな器官や組織に対し、精密で、かつ緻密な運動命令を行なっているところです。もちろん大脳のうちで、大脳半球が、最も大きな部分を占め、意識・思考・記憶・言語といった精神作用や、視覚・聴覚・味覚・嗅覚などの非常に精巧な感覚機能を調整したり、コントロールしたりする上で、最大の機能・役割を発揮しています。また大脳は、左脳と右脳に分かれており、左脳は理性的、時間的、直接的、現実的、功利的機能を、右脳は感性的、空間的、間接的、空想的、理想的機能を果たしています。この対立的、対照的ともいえる左右の機能は、互いに集積回路のようなところでつながっており、バランスをとり、調和を保つようにコントロールされています。そして、精神分裂症のもうひとつの症状としては、この左右の機能が統制されていない状態・現象を指す場合があります。 4)小脳 大脳の下、延髄の後ろにあり、随意筋を調整して、体の平衡を保つ機能を果たしています。つまり、小脳は、精密な運動機能を調整する主要な中枢器官であり、体の姿勢やバランス、骨格筋の緊張、視覚・聴覚・体性感覚のフィードバック機能を、無意識反射として調整・調節しているところです。 ※脳神経 細胞たちの独立的な特性 ①酸素の消費量 人の体全体の細胞の数は約100兆ほどですから、脳は体全体の約60分の1にあた りますが、呼吸によって体内にとり入れた酸素の20%も使ってしまいます。もし、 体重が90kgの人なら、体重の約70分の1にあたるごく小さな器官が、この人のと り入れた酸素のうち、5分の1を消費してしまうのです。これは事実です。吸い込ん だ酸素の20%を消費するということは、栄養素という観点から見ても、やはり体が 必要とする必需栄養素全体の20%を、脳が消費するということになります。この20%というのが、普通の生活状態における脳の酸素消費基準です。もしも脳が、過度のストレスを受けたり、きわめて集中力を必要する精神活動を行なったりすると、酸素消費はただちに40%、50%、60%、70%にまで増えてしまいます。 ですから脳神経細胞は、他の体の器官よりも、はるかに多くのエネルギーと酸素、および必需栄養素を消費しているわけです。 心に悩みごとがあったり、職場で神経をすりへらしたり、頭の使う仕事をしたりして ストレスがたまると、脳細胞は、おびただしい量の酸素を消費しているのです。ひど く興奮したり、緊張して神経を使ったあと、後頭部が痛くなったり、頭がぼうっとし たり、めまいがしたりしますが、これは、脳細胞が体のほかの器官よりも、大量に酸 素と栄養素を消費させた結果です。かっとなって怒ったり、興奮したりすると、その後、1時間か2時間、へとへとになる経験がおありなのではないでしょうか。 ところで現代医学は脳神経病気である精神 病気を治療するとか原因究明の接近方でこの酸素の消費量と彼に対応した必須栄養素 の消費量を無視しています。 ②脳神経細胞ー特異性栄養素の要求 酸素を消費すれば、同時に栄養素も消費しているのです。脳細胞は、そのエネルギー 源として、たった1つの栄養素しか使いません。それは葡萄糖です。脳細胞は清浄な エネルギー源といわれている葡萄糖しか消費しないのです。その葡萄糖を消費しなが ら、同時に酸素と水、そして必需栄養素も消費しています。脳細胞が消費して不足し た酸素と水は、ただちに補充できますが、必需栄養素はすぐには補充できませんから、一時的に必需栄養素不足を起こしますが、これが長期にわたって重なっていくと、栄養減少症(click)になってしまいます。 精神的、神経的な疾病の多くは、脳細胞における葡萄糖と蛋白質の代謝に必要な補助 的必需栄養素減少症に、その原因があります。(科学者たちはこれを無視してこれの ため現れるしかない結果を持って精神病気の原因を細胞に発生した生科学的異常を代 謝障害説、免疫説、アレルギ説、ウイルス説と主張しています。) 栄養素減少症は脳細胞の正常的に発生する機能を低下させるとか老廃物を分解する機能を低下させて神経回路網の信号伝達も低下させます。脳細胞が必要する必需栄養 素は、葡萄糖が代謝されるときに必要とするもの、蛋白質の代謝に必要なもの、脂肪 の代謝に必要なものというふうに分類されています。これらの代謝必需栄養素のうち には、互いに共通するものもありますが、ほとんどは代謝機能によって異なっていま す。ですから、精神病の予防や治療には、主に葡萄糖と蛋白質が代謝されるときに必 要となり、消費される必需栄養素が使われるわけです。 この部分がエデン療法の治療中心です。 ③脳神経細胞たちの独立的な運営システム 脳細胞集団には、リンパ腺がありませんから、ほかの細胞集団と比べると、免疫のあ り方、つまり、免疫体系が異なっています。脳細胞は自分には必要のない異物とかま ったく同じホルモン分子であっても、脳は、自分で生産したホルモンしか使わず、ほ かのところで生産されたホルモンは受け入れないように、バリアが張りめぐらされて います、これが「脳血管バリア」です。もちろんこれも医学の定説です。 脳細胞が神経系タンパク質を合成・分解するには、それに応じた脳細胞独自の「特異 栄養素」を選択的に必要とするし、エネルギー源であるブドウ糖が代謝される場合も、代謝用の「細胞特異栄養素」を選択的に必要としていることは言うまでもありません。 一方、脳細胞集団には、リンパ腺がありませんから、リンパ腺に関連する必須栄養素 は必要ないわけですし、脂肪は貯蔵しませんから、脂肪に関連する必須栄養素も必要 ではありません。脳組織が神経系タンパク質を合成・分解するには、それに応じた脳 細胞独自の「特異栄養素」を選択的に用いるし、エネルギー源であるブドウ糖が代謝 される場合も、代謝用の「細胞特異栄養素」を選択的に必要としていることは言うま でもありません。 このような理由で脳細胞で使われる葡萄糖はインシュリンという糖尿と関係があるホ ルモンの支配の下にありません。この時、消費する必須栄養素はあまり必要ではない でしょう。脳組織の特有な独立運営システムは脳細胞ー特異性栄養素の範囲を私たち に教えてくれるのではなく独立的な治療方法を私たちに教えてくれるのです。 2.精神病の治療原理と、胃腸病や皮膚病の治療原理とが同じ理由 Eden療法の考えは、精神病の治療原理と皮膚病の治療原理は、細胞の栄養状態と代謝過程から見れば、まったく同じだということです。「どうして精神病と皮膚病とを同じ原理で治療するのか、」と反問される方がおられるかもしれません。 しかし、脳細胞も皮膚細胞も、「細胞」という面では同じです。違いはそ構造、つまり、脳細胞の方がはるかに細分化しているだけのことです。どちらも、酸素と水、そして栄養素を利用して、それぞれの細胞がもっている遺伝子によって、特定の物質を作ったり分解したりする作用は同じ原理です。 また、細胞が外部の刺激を受けて反応する原理も細胞同士が互いに信号を送りあう原理も同じです。そればかりではなく、訓練すれば細胞は発達し、使わなければ機能が低下するという原理も同じなのです。 ですから、脳細胞の機能低下がもたらす精神病も、細胞の機能低下によって起こる胃腸病や皮膚病と同じように見なすことができるわけです。筋肉運動を繰り返すことによって筋肉が強化されるように、心理的訓練と栄養素の供給によって、脳細胞も強化することができます。 現代医学の問題点をあげると、例えば、話をしたり、何か食べたりするとき、唾液腺から唾液が分泌しますが、この機能のバランスを 調整するのに、いったいどんな異物が必要というのでしょうか。ただ、水と酸素、そして唾液の適度な分泌に必要な栄養素だけ十分のはずです。これらさえ供給すれば、世界で最上の洗淨剤と抗菌剤、さらに消化酵素を得ることができるのです。たとえ唾液腺に障害が起こったとしても、その細胞に酸素と水、そして栄養素を十分に供給しさえすれば、細胞は自ら解毒作用をとり戻すものです。 脳細胞もこれと同じで、いかなる異物も必要ではありません。酸素と水、そして栄養素をバランスよく供給するだけです。後、細胞自身に任させておけば、すべてを処理してくれます。また、主婦特有の慢性「主婦湿疹」といわれる皮膚病を患った何人かの方にもお目にかかったことがあります。この症状にも、本当に異物である軟膏が有効なのでしょうか。軟膏に新しい健康な細胞を作り出す力があるというのでしょうか。また細胞の機能が低下になるとか亢進されるとかまたは組織が損傷されたとき、その回復には決定的にそれと関係がある栄養素で可能です。 3.ストレスと脳の神経細胞との関係 体の機能を調整する2本の軸は、ホルモンと自律神経です。このホルモンと自律神経が正常に働かない主な原因はストレスです。自律神経が正常に働かなければ、体のいろいろなところで機能障害が起こり、病気が発生することになります。ですから、「どのような機能障害なのか、どのような機能に異常が発生しているのか、はっきり分からない病気は、すべてストレスによる」ものです。 現代はストレスの充満している社会です。複雑な仕事をあれこれこなしながら、一生懸命に私たちは生きています。現代社会を導いたともいえるエジソン以前の人たちは、日が暮れれば、すぐ寝てしまう生活を送っていましたが、現代人は夜遅くまで、仕事をしたりテレビを見たりしています。 ストレスという言葉はよく使われる言葉ですが、ストレスとは、私たちを取り囲んでいる環境の変化によって生じるものです。ストレスには、精神的ものと物質的なものがあります。 精神的ストレスというのは、例えば、子どもが病気になったり、家族と喧嘩したりといったマイナスの環境変化によるものと、子どもが試験の結果、クラスで一番になったとか、職場で昇進したなど、プラスの変化によるものがあります。とても大きな環境変化としては、失業、倒産、不治の病に侵されたり、配偶者に先立たれたり、また、買った株が高騰したり、新しく家を買って引っ越したりといったことがありますが、こうした生活環境の変化が、精神的環境変化となるものです。 物質的環境変化とは、体内の細胞レベルにおける物質的環境変化のことを指しています。例えば、仕事のしすぎによる過労や、お酒を飲み すぎたり、激しい運動をしすぎたりする、また、けがをして多量に 出血したり、大量に汗をかいたりする、長期間にわたる偏食や、毒性のある薬の服用などによって生じるのが、物質的ストレスです。 このような体の外や内から生じるストレス、つまり、精神的物質的ストレスがひどくなればなるほど、私たちの脳細胞や神経細胞、そのほか体の各組織や器官の細胞は、その物質環境が正常的環境から非正常的環境に変ります。つまり、あなたの必需栄養素を使いすぎて、栄養素の減少症になってしまいます。こうして、体のいろいろなところが病気になってしまうのです。 神経の使いすぎが、神経性の病気や神経と関連する病気を引き起こすことは、よく知られています。これは確かな事実です。なぜなら、先ほども脳細胞のところで申しましたが、神経を使えば使うほど、神経系栄養素もますます多量に消費されるようになり、体の機能を調整する自律神経系の細胞は、ますますひどい栄養減少症になっていきます。そのため、自律神経の機能が低下し、体のあちこちで、さまざまな機能低下症候群が発生することになります。 自律神経は、心臟を規則的に拍動させたり、血管の收縮・膨張を調整したり、また、胃や腸の運動をリズミカルにするように、消化・吸収・ 排泄をしたりするだけではなく、体のすべての器官と組織の機能をバランスある状態に保ち、維持していく働きをしています。その働きは、まったく正反対の作用をする交感神経と副交感神経とに分担され、体が絶好の状態になるように調整しています。 しかし、このような神経の働きも、脳で神経伝達物質が合成されてこそ、発揮できるものですから、脳における栄養素の過不足が直接、自律神経に影響を及ぼします。 ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12など、活性系のビタミンB群は、よく神経ビタミンともいわれ、もちろん必需栄養素ですが、神経細胞にはミネラルも必要なのです。 したがって繰り返された大きいストレスは脳神経系と自律神経系細胞の栄養素減少症を起して、正常的脳神経系細胞及び自律神経系細胞の物質環境を乱らせて、各種信号伝達の障害を持ってきます。脳神経系細胞において信号伝達障害は、各種精神病で現れます。 4.神経栄養素の摂取 これらの栄養素を十分に摂取するためには、とても難しいことではありますが、偏食は大敵なのです。しかし実際は、たとえ偏食しないとしても、最近の穀類や野菜、果物などは、たっぷりの堆肥で育っているわけではありませんから、ビタミン類などの栄養素が十分に供給できるとはいえないのです。また、市場に多くの加工食品が出回っていますが、これらは通常、高カロリー食品で、エネルギーは十分ですが、必需栄養素が不足しています。ですから、薬局で売っている栄養素を買って飲むよりほかありません。ただ、栄養素は目的によって処方が異なります。また、男性と女性、 中高年者と若者、飲酒の習慣があるかどうか、どのような病気なのかによって、もちろん処方も違ってきます。 しかし、たとえ控えめに申しても、現代人は誰でも、栄養のバランスが十全とはいえませんから、自分ではとても健康だと思っていらっしゃる方でも、栄養素のバランスをとり、維持していくためにも、どれか複合栄養剤を選んで、適度に飲まれることをお勧めします。 神経栄養素素減少症になると、体内のすべての器官や組織を支配する脳細胞の働きのなかでも、最上位ホルモンを合成・分泌する機能が低下してしまいます。脳で合成され分泌されるホルモンが最上位ホルモンなのですが、単一の作用しかしないというのではなく、体内の至るところで合成・分泌されるさまざまな下位ホルモンを支配するという総合的な作用を発揮するものなのです。ですから、もし体内の栄養バランスが、最上位ホルモンの速やかな合成・分泌をうながす状態になっていなければ、下位ホルモンの支配する器官・組織に障害を起こし、体のあちこちに原因不明の病気が生じることになります。 この栄養素素減少症は、ほかでもなくストレスがもたらします。ですから、まずストレスを解消しなければならないのですが、それには、 十分な必需栄養素を補充することが一番重要なことです。次は十分な休息と睡眠、その次が適度な運動です。もしこの順序を逆にして、運動にだけ熱中すれば、ますます必需栄養素が不足して、逆効果になってしまいます。心理治療も脳神経細胞立場では運動だけであります。 5.脳細胞、および、神経細胞の情報信号伝達機能 精神病の脳神経細胞では、いったいどんなことが起きているのでしょうか。その起こっている現象の、いったいどこが間違っているのでしょうか。もしも仮に、このような質問に対し、科学的な推論にもとづいて、正しく答えることができるのなら、精神病というのは、もっと簡単に理解が可能で、治療しうる病気のはずなのです。 しかし、実際はそうではありません。今わずかずつでも解明されつつあるのは、脳細胞、および、神経細胞の情報信号伝達機能というのはいったいどのようなものなのか、といったことにすぎませんが、それでも、とても大きな発見でした。 脳細胞や神経系細胞の主な機能は、さまざまな情報や信号を、体内のいろんな組織や器官に伝えていくことです。それだけではなく、もっと立体的、重層的に、脳細胞と脳細胞との間でも、あるいは、脳細胞と自律神経細胞、脳細胞と末梢神経細胞、自律神経細胞と末梢神経細胞、さらに、それらと末端の細胞との間でも、非常に複雑なネットワークを通じて、互いに情報や信号をやりとりし、伝えあうと同時に、それぞれの細胞が、すぐさま伝達された情報や信号を処理しているのです。また、脳神経細胞群は、それぞれの機能によってグループをなし、別々に脳神経回路網を構成していますが、そればかりではなく、これらの機能別神経回路網も、それぞれが互いに連絡しあえるように、大きなネットワークを構成しています。 こうしたネットワークの発見は、20世紀後半に驚異的な発展を見せた生命科学と生化学>(生物化学)、特に、細胞科学という分野のおかげですが、これによって、ネットワーク上の細胞群が、どのように情報や信号を伝達しあっているのかというメカニズムが、明らかにされつつあります。そして同時に、この情報信号伝達を妨げる要素は、いったい何なのかということまで、分かるようになっています。 先ほど述べました脳細胞、自律神経細胞、末梢神経細胞、さらに、末端の細胞といったそれぞれの間では、いったいどのようにして情報や信号がとり交わされているのかを簡単に説明してみましょう。 2003年度のノーベル化学賞を受けたのは、ピーター・アグレ(Peter Agre)と、ローデリック・マッキンノン(Roderick MacKinnon)です。この二人は、細胞膜を、水が通るチャンネル(water channel) と、カリウムイオンが通過するチャンネル(potassium channel)との立体的な構造を明らかにして、この賞を受けました。 細胞膜を物質が出入りする過程の解明において、現代の生化学は驚くべき進歩を示し、細胞膜で起こっている化学的な結合と解離についても、かなり研究が進んでいます。近年の生化学者たちは、さまざまな蛋白質性のホルモンや神経経由の伝達物質が、細胞膜にある水溶体分子(主に燐脂質分子)と化学的結合を行なうことによって、細胞内に信号を伝達するという機能を明らかにしています。 このような研究結果によって、末端の細胞と細胞の間においても、互いにどのような情報や信号のやりとりが行われ、伝達され、処理されているかということも、分かるようになりました。 1)インスリンと糖尿病 糖尿病と深い関係のある重要なホルモン、インスリン分子についても、情報信号の伝達過程が詳しく解明されています。胃のなかに食べ物が入ってくると、胃の粘膜にあって、センサーの役割を果たす特定の細胞、いわばセンサー細胞が、炭水化物に含まれているブドウ糖濃度のおよその値を化学的に計算して、膵臓へ、その数値情報を送ります。 実際、この過程はすでに実験によって証明されています。胃に粘膜から、この情報を受けた膵臓は、インスリン分子を分泌して、血液中に放出しますが、放出されたインスリン分子は、必要とされている肝細胞や筋肉細胞、または脂肪細胞などに赴いて作用し、自らの機能を果たします。インスリン分子がブドウ糖を処理するのですが、ブドウ糖を処理する信号が、体内の細胞に伝わるためには、インスリン分子が、その細胞の細胞膜に存在するインスリン水溶体と化学的結合する必要があります。この化学的結合がなされてはじめて、インスリン分子は細胞内に作用をおよぼすことができ、ブドウ糖も分解できるというわけです。 この過程の立体的構造は、すでに1970年代から1980年にかけて、多くの生化学者たちによって明らかにされてきました。この間に、細胞膜に存在するインスリン水溶体の構造が明らかにされると同時に、このインスリン水溶体が何らかの原因で変質を受けているような場合、インスリン分子はインスリン水溶体と化学的に結合できず、体内の細胞に作用をおよぼすことも、ブドウ糖を分解することもできないということまで、明らかにしました。 つまり、インスリン水溶体の分子的変質は、インスリンが分泌されているのに作用しない、つまりブドウ糖の処理ができない「インスリン非依存性」糖尿病と関係があるのは明白ですし、まさに関連ありという報告が出されています。胞膜のインスリン水溶体の変質が、インスリン分子との結合を阻んでいますから、この現象を「インスリン抵抗性」と呼ばれており、糖尿病学界では誰もが認めている理論なのです。 2)細胞膜と情報信号伝達スイッチ 体内の細胞だけではなく、脳神経細胞であるニューロンについても、同様なことが明らかにされています。この体内の細胞を、脳細胞と比較する場合、体細胞と呼ぶことにします。 つまり、さまざまな脳神経伝達物質とホルモンの情報信号(体細胞でいえば「インスリン分子」に相当)とは、ニューロンとの接合部分(細胞膜)に存在する「シナブス」(インスリン水溶体)を通してはじめて、ニューロンに伝達されているわけです。 以上のような研究結果にもとづいて、神経細胞の情報信号伝達機能を簡単に説明すると、脳神経細胞の情報信号伝達体系には、それぞれの脳神経細胞に特有なスイッチ、つまり「シナブス」や「インスリン水溶体」のようなものが存在しているといえます。基本的スイッチ、一次的スイッチは、細胞膜に存在しています。例えば、メラトニンというホルモンは、脳で作られている睡眠をうながすホルモンなのですが、血液中に疲れ物質の濃度が増してくるにつれて、目を閉じるとか、周りが暗くなるといった条件、つまり「薄暗い」という刺激が脳に伝わると、メラトニン・ホルモンが、脳で増産されるようになります。すると、このメラトニン・ホルモンの作用によって、私たちが目覚めて活動しているときに働いている細胞群、つまり「表面意識細胞」に存在するメインスイッチが切られてしまい、無意識の領域である眠りへと入っていくことになります。 「表面意識細胞」というのは、さきほど「脳の解剖学的構造と機能脳幹」のところで述べた「爬虫類の脳」とも呼ばれている「脳幹」にある延髄などの細胞を除いた部分、つまり心臓の摶動と肺の呼吸運動とに関わっている細胞群を除いた、意識・思考・知覚・感覚・体の平衡・運動などと関係する神経領域にある細胞群です。ですから、メラトニン・ホルモンの作用によって、表面意識細胞のスイッチが切られて、表面意識細胞が動かなくなるというのは、眠っている状態を指しているわけです。そして、このとき、メラトニン分子は、脳神経細胞の細胞膜にある「メラトニン水溶体」分子と化学的に結合しているのです。すなわち、一時的にではありますが、「メラトニン水溶体」と結合することによって、表面意識細胞のスイッチを切ってしまう機能をもっています。これは表面意識細胞に対して、表面意識細胞が活性状態にあるか、睡眠状態にあるかを選択するスイッチの役割を果たしているわけです。 逆にいえば、細胞膜に存在している「インスリン水溶体」や「メラトニン水溶体」といった情報信号受容分子も、インスリンやメラトニンに対して、スイッチの働きをしており、互いが互いのスイッチになっているともいえます。 以上をまとめると、次のようになります。つまり、脳神経回路網を構成している脳神経細胞群や、体内細胞群への情報信号伝達は、これらの細胞膜に存在している情報信号受容分子との化学的結合、つまり「ON」と、解離、つまり「OFF」というスイッチ機能によって行なわれていることになります。 そして、この大きな情報信号伝達ネットワークに故障が生じている状態とは、細胞膜の情報信号受容分子が、何らかの変化・変質を起こしている状態です。つまり、病気とは、細胞膜の情報信号受容分子の変質によって、細胞の情報信号伝達に障害が発生している状態です。ですから、この分子の変質を、もとどおりに直せば、病気は完璧に治るということになります。そして、この変質をもとに戻すものは、栄養素をおいてほかに何もない、つまり、栄養素だけだ、というのが、>Eden療法の主張なのです。 うつ病や躁うつ病、強迫症、精神分裂症、幻聴、幻視といったさまざまな精神病を、脳細胞の信号伝達障害という角度から、もう一度とらえなおすべき時期に来ています。ただ、現代医学は、そのことに気づいていないか、気づいていても、面子のために、無視しているか、気づいていないふりをしているだけなのかもしれません。 6.科学性という点から見た、Eden療法と既存療法の比較 科学はすべて、仮説から出発します。仮説から出発しますが、その仮説の正しさを、いろんな観察や実験によって証明していきます。そして、それによって証明された仮説は、すでに仮説ではなく、実際の法則や理論となります。ある治療法によって、精神病のほとんどが根本的に治らないのであれば、この治療法の出発点であった仮説が間違っていたということになります。 脳細胞は、体細胞よりも、一段と複雑な体系をなしています。この複雑な体系に生じた問題を、いくつかの単純な仮説によって説明し、ごくわずかの実験や臨床例によって証明されたというだけでは、問題を根本的に解決することにはなりませんし、このような仮説から導きだされた対策や治療法に、科学性があるなどとは、とうてい言えるはずもありません。複雑な脳細胞の体系には、その体系に見合った仮説や治療法が必要です。 Eden療法のいろんな栄養素処方は、この複雑な体系に適した対策です。 1)Eden療法の仮説 Eden療法の精神病に対する治療法は、次の仮説から始まっています。 a)脳細胞に、異物が入っていけないなら、脳細胞の機能的異常は、遺伝的傾向とい うよりはむしろ、脳神経細胞における特異性栄養素の減少症に、その原因がある のではないか。 b)脳細胞中の疲れ物質濃度が増加しているのに、疲れ物質をすばやく分解・排出で きず、老廃物がたまる一方であれば、当然この状態は、情報信号伝達障害を引き 起こすのではないか。そして、この老廃物を分解・排出させるのは、タンパク質 性の酵素ではないか。 脳細胞には、異物分子が入っていけないようにバリアが張られている、というのは、以前にお話した「脳血管バリア」理論にもとづくものですが、バリアが張られて、異物分子が入ったわけでもないのに、脳の運営体系に、機能的な問題が生じているとすれば、それは、外部からの影響ではなく、脳細胞内部で発生した問題のはずです。 もし、脳の機能的な障害が、脳細胞内部の問題であるなら、その原因は、必須栄養素の減少と、老廃物の増加、および、この2つによって引き起こされた細胞内外の酸化的損傷以外には、考えることができません。 つまり、脳の機能的な障害を排除する方法は、脳細胞が必要とする必須栄養素の血中濃度と組織内濃度とを、高いレベルで維持していくことです。
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